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2010年01月14日
ジェイクのアメリカ本土旅日記 byマネージャー
第211回:イギリス物語その5(最終回)

天使と女神の魔法のヴェール
天使と女神の魔法のヴェール
私達スタッフはステージ口のすぐ外に用意された巨大なテレビでステージの模様を見守ります。話しに聞いていた通り、他のアーティスト達は皆、日本の紅白歌合戦のように、衣装もパフォーマンスもかなり派手です。レディ・ガガに至ってはピアノを宙づりにして演奏しています。小林幸子ばりの衣装とあっと驚く仕掛けのセットで歌っているアーティストもいます。さあ、そしていよいよ、今夜のオオトリ、ベット・ミドラーの登場となりました。まず、イギリスのコメディアンだというMCがベット・ミドラーの短いプロフィールを紹介します。そしてステージの緞帳が上がり、ベット・ミドラーが華麗に姿を現しました。テレビの画面だとドレスのスパンコールがさらに光り輝いて、オスリンの施した透き通るような肌色とピンクのチーク、ロバートが手がけたお人形さんのような魅力的なヘア、そして、彼女のトレードマークである優しい笑顔が本当に素敵です。ベット・ミドラーは開口一番にジェイクをステージに呼び込みました。「今夜私と一緒に演奏してくれるのは、ウクレレプレイヤーのジェイク・シマブクロです」大きな歓声に大きな笑顔で応えるように、さっそうと登場したジェイク。落ち着いた足取りで自分が座る椅子に向かって歩きます。そして、ベット・ミドラーと目を合わせてお互いの準備が良い事を確認するかのように頷きました。私はテレビ画面の真ん前に陣取ってかじりつくような格好でカメラを構えながら、飛び出す寸前の心臓を飲み込むのに必死です。よしっ、椅子に座ったっ。これでもうジェイクの緊張は治まるはず。そう、ジェイクは本番に強い本番男なのだ!

会場は、一瞬で怖いほど静まり返りました。そして、天使が舞い降りて来るかのように厳かに始まった『In My Life』のイントロ。ジェイクが奏でるウクレレの音色が、イギリスはブラックプールのオペラハウスに響き渡り始めました。ベット・ミドラーは、優しい笑顔をさらに緩めてしっかりとジェイクを見つめています。そして……歌い始めました。ジェイクのウクレレの音色が天使の舞い降りる音ならば、ベット・ミドラーの歌声は、天使の翼からバトンタッチされた女神の魔法の杖。たったひと振りで聞く者達の心を虜にします。そう、天使と女神。二人は始終見つめ合いながら、お互いの存在を認め合うごとく、それぞれの魔法を「音」という姿に変えてオーディエンスの心の奥深くへと送り込んでいます。そして間もなく、二人が紡ぎだした魔法のヴェールがすっぽりと会場を包み込みました。神秘の瞬間です。全身に鳥肌が立って超興奮状態の私は、たぶん息をするのも忘れていたのだと思います。演奏が終わった瞬間に、大きな深呼吸が足のつまさきからお腹の深いところを通って、ふうぅぅぅぅぅっと溢れ出ました。ひゃ〜、肩と首がコチコチです。ベット・ミドラーと目だけでガッツポーズを取るかのように頷き合ったジェイクは、余裕の笑顔で椅子から立ち上がり、会場にお礼の投げキスをしてステージを下りて行きました。はぁ〜、終わった……。

ベット・ミドラーがソロで歌った『Wind Beneath My Wings』も、リハーサルで難儀していたモニターの問題も無くすっきりと、大歓声の中終了しました。と同時にMCがさっそうとステージに踊り出て、フィナーレのアナウンス。4時間近くに渡って行われたステージの出演者達が次々と、もう一度ステージ前方に進み大きくお辞儀をします。全員が揃ったところで感動的に緞帳が下りて全てが終了。ほほう、赤組白組の区別は無いものの、やっぱりこりゃイギリス盤『紅白歌合戦』だわ。豪華で楽しい年末のお祭り行事といったところです。が!実は、もうひとつの大イヴェントがこの直後に待っています。私的にはこれがこの『Royal Variety Performance』の最大のクライマックスだと思っているのですが、何と、もう一度緞帳が上がったところで、エリザベス女王がステージに上がり出演者ひとりひとりと握手をしてくれるのです。これこそ、一生に一度きりの大イヴェントと言えるでしょう。ジェイクもこの瞬間をそれはそれは心待ちにしていました。事前に、いろんな人が、女王に会う際のマナーというものを伝授してくれたのでそれなりに準備はしていたものの、画面に写ったジェイクそしてベット・ミドラーは、いったん解けたはずの緊張感が舞い戻って来たらしく、女王とのご対面の瞬間の笑顔にはかなりのぎこちなさが現れていました。

私達スタッフは楽屋に戻って来た二人を大きな拍手で迎え、今回のイヴェント成功を祝うと同時に、この三日間に築き上げたお互いのチームの「友情」を感謝し合いました。短い時間でしたが、奇跡の三日間。今後のジェイクのアーティスト人生を大きく変えて行く三日間となった事は間違いありません。ベット・ミドラーご一行は、チャーター便で今夜はこのままロンドンへ飛ぶと言います。レコード会社によってセッティングされたプロモーションはまだまだ終わっていないようです。必ずまた、いつかこの地球上のどこかで再会しましょうと誓い合い、何度も何度もハグし合いながら皆で別れを惜しみ、ジェイクと私はホテルへ戻る車に乗り込みました。

ロバートの楽しい話しも、それに茶々を入れるオスリンの声もしない、シーンと静まり返った車内。真っ暗闇の中を走るバンの乗客は私達二人だけ。急に疲れを感じ静かに目を閉じると、まるで空を飛んでいるかのようにふわふわとした気持ちになって来ます。もしかしたら夢だったのかしらん。ここはイギリスのブラックプール?今夜、本当にジェイクはイギリス女王の前で演奏した?ベット・ミドラーと?目を開けたら朝になっていて全ては夢だった、なんて言わないでよね?

ジェイクはやっと緊張と疲れがほぐれたらしく、全身を車のシートに身を任せ、ちょっと下向き加減に何かを考えています。そう、明日はハワイへ戻り、翌日には大きなイヴェントが待っています。そのイヴェントの事を考えているに違いありません。『Toys for Tots』という、恵まれない子供達のために行われるファンド・レイザーのコンサート。規模こそ違いますが、『Royal Variety Performance』もファンド・レイザー。 世界中、クリスマスのこの時期には無条件に人々が助け合う心が生まれるものです。日頃から慈善心旺盛のジェイクは、サンタクロースにでもなったかのごとくさらに多くの人達に自分の愛を送ろうと、この時期にはいろんなイヴェントに参加する事にしています。今年も、17日から日本に行くまで毎日分刻みでハワイ中の子供達や恵まれない人々の元を訪れ、仕上げには毎年恒例のホノルルマラソンでの演奏をし、心残りの無い充実したハワイの年末を過ごす事にしています。体はまだイギリスにありながら、心と頭はすでにハワイ。そしてハワイで待ち受けている数々のイヴェントの事、そして大勢の人達の事を考え始めているのです。

そんなジェイクを見つめていたら、今年のあれこれが走馬灯のように思い出されて来ました。2009年は今まで以上に「飛躍の年」だったね、ジェイク。マラソン断念など悔しい事もあったけれど、未だに信じられない素晴らしい出来事がたくさんあった。ずっと夢だったヨーロッパにも行く事が出来たし、年の締めはイギリス女王の前での演奏。どれもこれも、いろいろな人のサポートがあってこそ実現したプロジェクトの数々だった。そうして生まれた私達のこの幸せを、助けてくれた人達に感謝すると同時に、来年もまた世界中の人々と分かち合おうね。ウクレレという楽器を通して。





まだベット・ミドラーとの演奏をご覧になっていない方、以下をクリックしてみてください。
http://www.youtube.com/watch?v=i72bN_Pk5bM&feature=related
ジェイクとベット・ミドラーは全くおんなじ格好とスマイルです(笑)。
ジェイクとベット・ミドラーは全くおんなじ格好とスマイルです(笑)。
エリザベス女王の向こうにいるのはジェイク。そう、エリザベル女王はジェイクに話しかけているのです。
エリザベス女王の向こうにいるのはジェイク。そう、エリザベル女王はジェイクに話しかけているのです。


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