今週末は毎年恒例の世界的大イヴェント『イースター』。日本では確か『復活祭』と呼んだと思います。 このため今日から4日間ホリデーになるので、遊びに出かける車の渋滞が心配と、ブリスベンを朝の7時に出発します。 夕べはユーマンディの会場を出たのがミッドナイトでブリスベンのホテルに帰って来たのはもう2時。 それから荷造り等をして寝たのは3時過ぎ。 ジェイクも恐らく演奏の後にいつも残るちょっとした興奮状態が邪魔して朝方まで寝られていないはずなので、7時出発はかなりキツかったけれど、それでもジェイクは車に乗った途端、ウクレレの弦の張り直し作業を始めました。
ピーカンの秋晴れの中(オーストラリアはこれからが秋本番)、渋滞も無く快適に車は目的地に向って走ります。 途中の街で朝食を食べ、今ツアー私達にとって最大のイヴェントである『Byron Bay Blues Festival』の会場に到着したのは11時。 過去2回参加した他のフェスティバルと違って、セキュリティがもの凄く厳しいです。 それもそのはず。 だってBuddy Guyや Keith Urbanや Stanley Clarkeや Sinead O'Connorや KT Tunstallや The Black Crowesや Jake Shimabukuro などの世界のビッグアーティストが参加のフェスティバルなんです!
昨日から既に始まっているフェスティバルですが、ジェイクは本日のスタートを切る、最初のアーティストです。 ただ、どこの国のフェスティバルも一緒だと思いますが、オーディエンスは夜に向ってどんどんエキサイトしていき、ステージも時間が遅くなるに従って有名なバンドが出るってのが通常のパターン。 果たして、こんな真昼間のお天道様がガンガンと照りつけている時間に、二日酔いのオーディエンス達はジェイクのステージを観に来てくれるでしょうか。
演奏するのは、フェスティバルの敷地内に設置された4つのうちの最大のステージ『Mojoステージ』。目を見張るほどの大きさです。サウンドチェックを兼ねてステージに上がったのは11時50分。 スタート時間は12時15分なのでまだ少し本番までは時間があります。とは言っても、目の前に居るオーディエンスは………いち、に、さん、し………はは。数えられます。うーん、心配。
ジェイクはサウンドチェックが終わってもそのまましゃがみこんでこれから演奏する曲目リストを書き始めました。 持ち時間は30分。時間が短ければ短いほど演奏する曲の選択に悩みます。 ふと気づくとドンドンと方々から人が集まって来ています。 やったあ! スタート時間の12時15分には、ざっと計算して800人は集まりました。 そして1曲目の『Let's Dance』が始まると……“あー始まっちゃった” と言わんばかりに、さらにスピードを増して小走りに人がやって来ました。 そして3曲目の『Me & Shirley T.』の頃には800人だったオーディエンスはその倍に膨れ上がりました。す、凄い! もしもこれが夜の8時頃のステージだったなら、恐らく3000人は集まってくれた事でしょう。 現場のスタッフも「昼のステージにこんなにも人が来たのは初めてだ」と、びっくりです。
サイン会では長蛇の列が出来、沢山の人が「素晴らしかった」と言いに来てくれました。 大人だけではなく、子供達も「ジェイクは僕のヒーロー!」と言って、僕も僕もと、着ているTシャツや履いているスニーカーにまでサインをもらっていました。
サイン終了後はもう仕事は無し。後はゆっくりと他のアーティストのライヴを見てリラックスするだけです。 ランチを食べてアーティスト用のラウンジでくつろいでいると、4時30分からライヴ予定のリー・リトナーが現れました。 ジェイクがサッと近寄って挨拶をするとリー・リトナーは「いやあぁぁぁぁぁ!ジェイィィィィィク!Nice to meet you!!!!!!」と大きな声と満面の笑顔で挨拶を返してくれました。「先月杏里さんをゲストで僕のライヴにお呼びしたんですよ」「聞いてるよ。いや、以前僕もキミの名古屋公演に行こうとしたんだけれどチケットが取れなかったんだ」「えー!そうだったんですか?」と、初めてのご対面でしたが会話はポンポンと進みます。とっても物腰が穏やかで、優しくて素敵な人ですー。
リー・リトナーのライヴを見た後アーティスト・ラウンジに戻ると、今度は数年前に1度テレビでセッションをしたベース界の大物、スタンリー・クラークの姿を見つけました。 またもやジェイクは「ヘイ!スタンリー!」と近寄りましたが、スタンリー・クラークは何故か眉毛に皺を寄せて怪訝な顔。「スタンリー、僕ですよ、ジェイクです」その途端スタンリー・クラークの眉毛が両目から1メートルも跳ね上がりました。「ジェ、ジェ、ジェェェェェェイク!!! Wow!!」「久しぶりですね!再会出来て嬉しいです」「いやあ、変わったなあぁぁぁぁ、眼鏡はどうした?」と、眼鏡をかけて、その当時衣装提供をして頂いていた『サンサーフ』ブランドのアロハシャツを常着していたジェイクを覚えているスタンリー・クラークは、さっと見にはジェイク・シマブクロであるという事に気づかなかった、というわけです。
スタンリー・クラークのパワフルなショウを楽しんだ後は、いよいよ今日のフェスティバルのハイライト、シニード・オコナーのライヴ。 ジェイクは何故か『Nothing Compares 2 U』ではなくて『The Emperor's New Clothes』を生で聴くのをとても楽しみにしていました。 ところが。 会場に行ってみると……ジェイクが昼に演奏した同じ会場『Mojo』には既に人がギュウギュウ詰めになっていて全く入れる余裕がありません。 間違い無く1万人はいます。 昼の1500人で喜んでいた自分達を思わず笑っちゃいました。 泣く泣く、ステージ脇に設置された関係者席で観る事にしたのですが、ジェイクは誰のライヴもそうなのですが、普通のオーディエンスと同じ条件で客席で見たい人なので、「これじゃ音が全く分からない」と、かなり残念がっていました。 それでも期待通りにライヴは泊力満点。 とうとう『Nothing Compares 2 U』で会場全体の大合唱となった時にはジェイクも思わずニコッ。
一夜明けてフェスティバル2日目。 そしていよいよ今日がこのオーストラリア・ソロ・ツアーの最終日。 泣いても笑っても、オーストラリアでの演奏は今日の45分間のステージ1回のみです。 ジェイクは朝8時30分からウクレレの手入れを始めました。 そう言えば、夕べは夜中に雨が降り出したんだった。 慌てて空を見ると、やっぱり。 黒い雲があちらこちらに出没しています。 と思った途端、雨が大きな音を立ててザザーッ。 聞く所によると、この『Byron Bay Blues Fest』は毎年 “必ず雨が降る” というジンクスがあるんだそう。 去年などは4日間連日雨で、会場はキャンプ場もドロドロで悲惨な状況だったそうです。 私は「ジェイクは晴れ男だから雨は降らない」とAに断言していたので、雨が降り出した時には「あちゃー」。
午前11時30分に、夕べ宿泊したAの家を出発。 Aの家は小高い山の奥深いジャングルのような場所にあるので(静かでいいんだけど、クモとかアリとか凄くって)、クネクネとしたガタボコ道を走って下界へ降りると……あらっ、こちらは全然お天気です! Aも「やっぱりジェイクは晴れ男なのねー」と。 渋滞も無く会場に12時30分に到着。 今日の出番は1時45分。 会場内の4つのサイズのステージは最大、中、小、最小とあってジェイクの今日のライヴは『小のステージ』です。 小のステージなら、もう人が集まるかどうかの心配は要りません(笑)。 昨日と同様、アーティスト・ラウンジでくつろいでいると、日本人らしいグループに気づきました。 コーヒーを入れる場所でばったりそのグループの中の1人と遭遇し、思わず話しをしてみると、何と、『悟空』という日本の太鼓のグループでした。 2時45分から『Mojo』でライヴだと言います。『Byron Bay Blues Fest』にはもう何度も参加されているそうです。素晴らしい!
1時15分。まだ前のグループが演奏中のステージへ。 ふんふんなるほど。 この大きさだと収容人数はざっと700人くらいかな。 うーんでもなー。 昨日Mojoに来てくれた人は今日は来ないだろうしなー。 やっぱりちょっと客入りが心配だなー。 なんてったって最後のライヴです。ぜひともより多くの人に観て頂きたい! 1時40分。サウンドチェックも終わってジェイクの準備も整いました。 ここで私のさっきまでの心配は吹き飛びました。 もう既に会場はほぼ満員。やったぁ! なのにまだまだ、どんどん、じゃんじゃんと人が集まって来ます。ありゃー。 もう入らないっすよー。 え?まだ来るの? マジですか? いや、絶対テント内に入らないと思うんだけど…。
嬉しい悲鳴を上げながらそんな会場の状況をまじまじと眺め、心の中から精一杯の声援をジェイクに送り、写真もしっかり撮って、私もオーストラリア最後の仕事を一生懸命やりました。曲を終える毎に地響きが起こるほどの声援が。ウクレレの音よりも大きな、思わず耳を覆いたくなるくらいのオーディエンスの大音響です。
フェスティバルはまだあと2日間続きます。正直言って、これからがフェス本番という勢いの中、ジェイク・シマブクロはオーストラリアを離れます。 この2週間強の短い期間にガリバーみたいに大きな足跡を残して。 そして、次回のオーストラリア再訪問まで、オジー達はジェイクが残していったその足跡をちゃあんと確認し続けてくれる事でしょう。
今回のソロツアーは間違い無く、ハワイ出身のアーティストでは前代未聞のオーストラリア成功物語であったと言えます。 こうしてこれからも、ハワイの州知事以上に世界中にアロハの心を広め続けるであろうハワイ生まれの小さな日本人。 たった一本のウクレレを担いでどこの国でも「アローハッッ!」と呼びかけながら。 これって、さりげないようで実はもの凄い事をしているんだと思わずにいられません。
翌朝、成田へ戻るJAL便を待つラウンジでの出来事。テーブルを挟んで向かい合って座った白人。 何度か目が合っていてお互い気にはしていたけれど、コンピューターを使っている彼に「インターネット使えるの?」って聞いたら黙って大きなウインクが返って来ました。“Yes” の意味です。 そこから会話が始まっていろいろ話していたら、何と、オーストラリアとニュージーランド公演を終えて日本公演に向うアリス・クーパーのギタリストでした。 私も思わず「この子もミュージシャンなんです」とジェイクを差して言うと「おおっ。何を演奏するんだ」「名前は?」「バンドは?」「何ぃぃぃぃ?ソロ?ウクレレェェィィィィ?」と、様々な質問が返って来ました。 あぁぁぁぁぁー何という事か! アメリカのギター・プレイヤーにもまだジェイクの事を知らないっていうキトクなヤツがいるんだと知った瞬間、私の引退はまだまだ先だなあ、と思い知らされました(笑)。
26日からはグアム&サイパンツアー。何でも、島中の地元人が今か今かと首を長くして待ってくれているそうです。ジェイクのアロハの旅はまだまだ続きます。
白状すると、初日以外にもいろいろあって書き切れなかったハプニング続き(笑)のオーストラリア・レポート、まあ無事に事故も無くツアー終了という事で、これにておしまーーーーーい!
完…